北区中里

井之口聡写真展『日本の匠の現在』|北区|日比谷で出会う、北区の「職人の手」。写真展で再発見する伝統工芸の粋

伝統を受け継ぎ、現代に即した「生きた工芸」を残す、2つの工房の物語

北区に工房を構える「銀工房 こじま」の小島さんから、一通の素敵なご連絡をいただきました。 「写真家さんのライフワークである写真展が行われるのですが、当工房もその一つとして撮影いただきました」とのこと。

こんな格好良い写真、見ないわけには行かないでしょ!! ということで、普段写真展に足を運ぶ機会はそれほど多くない私ですが、「これは是非伺いたい!」と会場へ。

会場は、帝国ホテルプラザ東京内にある「MEDEL GALLERY SHU(メデルギャラリーシュウ)」。 JR山手線・京浜東北線「有楽町」駅から徒歩約5分、地下鉄「日比谷」駅からはわずか3分という好立地です。 私が訪れた日は、とってもお散歩日和だったので、東京駅から丸の内仲通りをゆっくり歩き、 春の柔らかな風を感じながら向かいました!

まず、今回お声がけくださった「銀工房 こじま」さんについて少しご紹介させてください。 2006年に設立された工房で、現在は二代目の小島信重さんと、信重さんの息子で三代目見習いの信一さんのお二人で守られています。

工房の原点は、100年以上遡る江戸の伝統工芸技術「末次派」にあります。 二代目・小島信重さんは、その純粋な血脈を受け継ぐ初代に師事し、現在は三代目見習いの信一さんと共に、その技を守り続けています。 金属を叩いて形を作る「鎚起(ついき)」の技術を駆使し、かつてはヨットや兜といった豪華な銀製置き物を得意としていた技術は、 今、かんざしや根付といった現代のライフスタイルに合う「和雑貨」へと注ぎ込まれているのです。 「伝統を基盤に、現代に即した生きた工芸を」という理念が、その小さな作品一つひとつに宿っています。

銀は、磨き上げることで「しろがね」と称されるほど全ての金属の中で最も高い反射率で白く輝きます。 この素材の魅力を最大限に引き出すため、糸ノコによる「切り回し」や、たがねによる「彫り」など、 現在も一点一点、手作業にこだわって生み出しています。

会場で実際に展示・販売されていた「銀工房 こじま」さんの銀製かんざし。

そして、写真展で出会うこととなったもう一つの北区の伝統工芸工房がありました。江戸べっ甲を扱っている「河端べっ甲」さんです。

「河端べっ甲」さんも、森 俊昭さん・孝裕さんの親子2代が伝統を守っています。 息子の孝裕さんは、2018年に美容師から鼈甲細工の職人へと転身。お父様の俊昭さんに師事し、修行に入りました。 美容師時代の経験を活かしアクセサリーを中心に製作する傍ら、三味線の撥や簪、帯留等、伝統的な和装飾具などにも情熱を注いでいます。

江戸べっ甲は、ウミガメの一種のタイマイの甲羅を材料として、甲羅から部品の形に切り出し、 やすりなどで表面を整え、熱を加えたり削ったりしながら形づくるもの。

べっ甲細工の歴史は非常に古く、奈良・東大寺の正倉院に宝物が残るほど。 原材料となるタイマイ(ウミガメの一種)の甲羅は現在輸入が禁止されており、 職人たちが大切に保管してきたワシントン条約締結前の天然素材が使われています。 磨き上げることで初めて現れる深い光沢と美しい模様は、自然が生み出した究極の芸術品といえます。

美しくて、思わず息を飲んだべっ甲細工。

北区の職人さんたちは伝統を背負いながらも、今の時代に馴染む「新しさ」を常に模索しているのです。 実は、北区にはこうした職人さんたちが集まる「北区伝統工芸保存会」があります。 平成4年に発足したこの会には、現在23名の職人さんが在籍。

伝統的技術・技法を守り続けながら、業種・品目を越えて交流を図るとともに、 多くの人々が伝統工芸品に親しむ機会を作っていくなど、伝統工芸の保存と発展のために活動しています。

毎年秋には、普段あまり触れることのできない伝統的な職人の技を披露し、 ものづくりの難しさや伝統工芸品を身近に感じていただく場として、北区伝統工芸展を開催。 また、区内小学校や児童館で出張体験講座を行い、伝統工芸に関する知識や作品づくりの体験指導にも取り組み、 次世代へ技を繋ぐ活動をされています。

レンズ越しに出会う「職人の魂」

いよいよギャラリーの扉を開けると、静謐な空間が広がっており、優しい雰囲気の写真家の井之口聡さんが出迎えてくださいました! 井之口さんが温かい眼差しで切り取られた職人さんたちの姿。そこには、言葉以上に雄弁な「手」がありました。

左の写真と、右上の写真が「銀工房 こじま」の小島さん。

「河端べっ甲」の森さんの作業の様子。

井之口さんが10年間の歳月をかけて撮ってこられたと言う職人さんの風景。 職人のみなさんの手仕事の様子が壁一面に並んでいる様子は圧巻です。

職人さんから職人さんへ、数珠繋ぎ方式(テレフォンショッキング方式)で紹介してもらったという井之口さん。 信頼のある人の紹介ということで、すんなりと工房にも入れてもらうことができたそう。 「そうじゃなかったら見ることができなかった場所や景色がたくさんあったと思う」と仰っていたのが印象的でした。

普段は見ることのできない光景だけれども、 「私たちのすぐそばには、世界に誇れるような素晴らしい技を守り続けている人たちがいるんだ」ということを 展示としての距離の近さや、実際に写真を撮ってこられた井之口さんとのお話の中から実感しました。

毎年秋には「北区伝統工芸展」も開催されています。 写真展で興味を持った方は、ぜひ次は実際に職人さんたちの技を間近で見に、北区へ足を運んでみませんか?

小島さん、素敵なきっかけをありがとうございました! 北区の伝統工芸の未来が、これからもずっと続いていきますように。

関連情報

銀工房 こじま
〒114-0016 東京都北区上中里3丁目21-4
HP:http://www.ginkouboukojima.jp/

河端べっ甲
〒114-0001 東京都北区東十条4-8-17
HP:https://www.kawabata-bekkou.com/

MEDEL GALLERY SHU HIBIYA(写真展会場)
〒100-0011 東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテルプラザ東京1F
【電話】080-9566-5467
【会期】3月27日(金)〜4月14日(火)12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
※水・木曜日は休廊

ミワとは何者?

桜田 実和(さくらだ みわ)
<経歴>
2000年生まれ、千葉県出身。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。 「観た人の人生を豊かに出来る俳優」を体現すべく、 舞台や体験型演劇のキャストなど「生」の対話に軸を置いて活動中。

自身が中高時代に生活を演劇に救われた経験から、 2022-2024年まで演劇メディアAudienceにて 「広く演劇の魅力が届くように」との想いでライターを担当。

<個人的なこと> 王子エリアは劇場や稽古場があることから、大学時代から通っていました。魅力溢れる街を、縁あってこうしてよりディープに知ることが出来ることがとても嬉しいです!

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